【SUS316Lの耐食性ガイド】各種材質との比較と評価ポイント

あなたは「SUS316Lの耐食性について知りたいけれど、どこから始めれば良いのかわからない」という悩みを抱えていませんか?そのような方々のために、私たちは「SUS316Lの耐食性ガイド」を作成しました。
この記事は、以下の質問にお答えする内容になっています。
- SUS316Lとは何か?
- 他の材質との耐食性の違いは?
- SUS316Lの評価ポイントや比較表はどうなっているのか?
- 実際にどのように選定すれば良いのか?
耐食性を重視する分野では、SUS316Lは非常に人気のある材料です。この耐食性ガイドでは、SUS316Lの特性や他の材質との比較を詳しく解説し、選び方のポイントもお伝えします。あなたが材料選定で失敗しないための情報が満載ですので、ぜひ最後までお読みください。
Contents
1. SUS316L 耐食性 比較評価 一覧詳細
1-1. SUS316とSUS316Lの基本的な違い
SUS316とSUS316Lはともにオーステナイト系ステンレス鋼ですが、炭素含有量に違いがあります。
- SUS316:炭素含有量約0.08%以下
- SUS316L(Low Carbon):炭素含有量約0.03%以下
この炭素量の違いが耐食性や溶接性に大きく影響します。
1-2. SUS316Lの耐食性の特性
- 低炭素設計により、溶接後の粒界腐食(感応性腐食)を抑制。
- 高い耐孔食性と耐粒界腐食性を有し、特に海水や塩素環境下での耐食性が優れる。
- 酸性環境や化学薬品にも強く、長期使用に適しています。
1-3. SUS316とSUS316Lの耐食性比較
特性 | SUS316 | SUS316L |
---|---|---|
炭素含有量 | 約0.08% | 約0.03%以下 |
感応性腐食 | 溶接部で発生しやすい | 低減されている |
一般耐食性 | 高い | やや高い |
使用温度限界 | 約870℃ | 約925℃ |
1-4. 使用環境による選択基準
- 溶接を多用する構造物や配管の場合は、溶接後の腐食リスクが低いSUS316Lが推奨される。
- 高温での使用や耐熱性が要求される場合は、SUS316を選択することがある。
- 海水や塩素系化学物質への曝露が想定される場合、耐食性の優れたSUS316Lが適している。
2. ステンレス鋼の耐食性について
2-1. ステンレス鋼の耐食性のメカニズム
- クロム(Cr)が10.5%以上含まれ、表面に不動態被膜(クロム酸化膜)が自然に形成される。
- この不動態被膜が酸素と反応し、材料表面を保護して腐食を防止。
- 被膜は自己修復機能を持ち、傷がついても再び形成される特性がある。
2-2. 耐食性に影響を与える要因
- 炭素含有量:高炭素は感応性腐食を招きやすい。
- クロム・ニッケル・モリブデン含有量:これらの元素は耐食性を高める。
- 環境条件:pH、塩素イオン濃度、温度、酸化還元状態など。
- 表面仕上げと処理:研磨や表面処理により耐食性が向上する。
2-3. ステンレス鋼の耐食性評価方法
- 塩水噴霧試験(SST):耐孔食性や耐錆性の評価に用いる。
- ポッティング試験:局部腐食の評価。
- 電気化学的測定:腐食電位や腐食速度の評価。
- 実環境曝露試験:実使用環境での長期性能評価。
3. ステンレス材の種類と特徴
3-1. ステンレス鋼の主要なグレード
- オーステナイト系(SUS304, SUS316, SUS316Lなど): 優れた耐食性と加工性を持つ。
- フェライト系(SUS430など): 磁性を持ち耐熱性が高い。
- マルテンサイト系(SUS410, SUS420など): 高硬度・高強度が特徴。
- 析出硬化系(SUS631など): 高強度と良好な耐食性を併せ持つ。
3-2. 各グレードの特性と用途
- SUS304:一般用途の耐食性部品、家庭用品。
- SUS316/316L:化学・海洋環境、医療機器。
- SUS430:自動車部品、家電製品。
- SUS410/420:刃物、機械部品。
- SUS631:航空・自動車の高強度部品。
3-3. ステンレス鋼の選び方
- 長期的な耐久性とメンテナンスのしやすさを加味し、最適なグレードを選定することが重要。
- 使用環境の腐食条件(塩素、酸性度、温度)を基にグレード選択。
- 機械的強度、耐熱性、加工性の要求に応じて材質を決定。
- 溶接や成形の必要性、コストも考慮。
4. プロジェクトに適したステンレス鋼のグレード選び
4-1. プロジェクトの要件を理解する
ステンレス鋼のグレード選定は、まずプロジェクトの具体的な要件を正確に把握することから始まります。
- 使用環境:腐食環境(海水、化学薬品、酸性・塩基性など)や温度条件を明確に。
- 機械的要求:強度、硬度、靭性、耐摩耗性などの性能目標。
- 加工・成形条件:溶接や切削のしやすさ、熱処理の可否。
- コスト制約:材料費や加工コストも含めたトータルコスト。
- 耐久性・メンテナンス:長期使用やメンテナンスの頻度。
4-2. グレード選定のポイント
- 耐食性:SUS304は一般環境向き、SUS316Lは塩素イオンの多い環境に適する。
- 機械的強度:高強度が求められる場合はマルテンサイト系や析出硬化系を選択。
- 加工性・溶接性:溶接を多用する場合は低炭素タイプ(SUS316Lなど)が好ましい。
- 熱的性質:高温用途なら耐熱性に優れたフェライト系などを検討。
- コストバランス:性能と予算のバランスを考慮し最適なグレードを選ぶ。
4-3. SUS316Lの適用事例
- 化学プラントの配管および容器材
- 医療機器の内部部品や外装部品
- 食品加工装置や衛生機器の部材
- 海洋設備、船舶の耐食部品
- 半導体製造装置の耐薬品部品
5. SUSの種類や強度値についての詳細
5-1. SUSの分類と特性
- オーステナイト系(SUS304, SUS316, SUS316L)
→ 高い耐食性と加工性、非磁性。 - フェライト系(SUS430など)
→ 磁性あり、耐熱性が高いが耐食性は中程度。 - マルテンサイト系(SUS410, SUS420など)
→ 高硬度・高強度、磁性あり、耐摩耗性良好。 - 析出硬化系(SUS631など)
→ 高強度で耐食性も良好、特殊用途向き。
5-2. 各種SUSの強度値比較
グレード | 引張強度(MPa) | 降伏強度(MPa) | 硬さ(HV) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
SUS304 | 約520~750 | 約205~350 | 150~200 | 一般用途向け、加工性良 |
SUS316L | 約480~620 | 約170~310 | 150~190 | 耐食性優れ、溶接適性良 |
SUS410 | 約620~850 | 約380~600 | 220~320 | 高硬度、耐摩耗向け |
SUS420 | 約750~900 | 約450~700 | 300~400 | 刃物・工具に使用 |
SUS631 | 約900~1200 | 約700~900 | 300~400 | 高強度で耐食性良好 |
5-3. 強度と耐食性のバランス
- コーティングや表面処理の併用も性能向上に有効。
- 一般的に高強度タイプ(マルテンサイト系)は耐食性がやや劣るため、腐食環境ではオーステナイト系を選ぶことが多い。
- SUS316Lは耐食性と溶接性に優れ、化学・海洋環境での使用に最適。
- プロジェクトの目的に応じて、強度と耐食性の最適なバランスを取ることが重要。
まとめ
SUS316Lは優れた耐食性を持つステンレス鋼で、特に塩水や酸性環境に強いのが特徴です。SUS304やSUS310と比較すると、モリブデン添加により耐食性が向上しています。評価ポイントとしては、耐食性、機械的特性、溶接性が挙げられ、各種用途での信頼性を高めています。