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SUS304の切削加工で失敗しない基準と注意点|加工硬化や工具摩耗を防ぎたい場合に

SUS304は耐食性と靭性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼で、食品機器や化学装置、屋外設備など幅広く利用されます。しかし切削加工では加工硬化や工具摩耗が起こりやすく、加工条件の管理が不可欠です。本記事ではSUS304の切削加工に関する基礎知識、加工条件、注意点を詳しく整理します。

意味・定義

SUS304はクロム(Cr)18%・ニッケル(Ni)8%前後を含むオーステナイト系ステンレス鋼です。腐食環境や高温環境で優れた耐久性を持ちます。切削加工では、旋盤・フライス盤・ドリル・ボール盤などで加工されますが、加工硬化により局所的に硬くなるため、工具摩耗や仕上げ面への影響に注意が必要です。

硬度は約HB160〜190、HV150〜200程度で中程度ですが、切削や曲げで加工硬化が発生し、炭素鋼以上に工具への負荷がかかります。

加工項目 目安条件 備考
切削速度 30〜60 m/min 加工硬化と工具摩耗のバランスを考慮
送り速度 0.05〜0.2 mm/rev 仕上げ面の品質に影響
切込み深さ 0.5〜3 mm 工具破損を避けるため調整が必要
冷却液使用 必須 加工熱抑制で工具寿命延長

基準・考え方

加工条件を決定する際は以下の3点を基準に判断します。

  • 工具材質とコーティング:超硬、コバルト合金、チタンコーティングなど加工硬化対策が重要
  • 切削条件の最適化:速度・送り・切込み深さを調整して加工効率と仕上げ精度のバランスを取る
  • 冷却・潤滑:切削熱を抑え、工具摩耗と加工硬化を最小限に抑制

加工物の形状、板厚、穴径、曲げ部などによって最適条件は変わるため、加工対象ごとに条件を整理することが重要です。仕上げ精度の要求が高い場合は、低速度・低送りで粗削り後に仕上げ加工を行うのが一般的です。

注意点

  • 加工硬化の発生:局所的に硬くなるため二次加工やねじ切りなどで割れや欠けが生じることがあります
  • 工具摩耗が早い:長時間の切削や高切込みは工具寿命を短くするため、工具交換計画が必要です
  • 冷却液・潤滑:加工熱による工具摩耗を抑えるため、適切な冷却液を使用することが推奨されます
  • 切削後の表面品質:加工硬化や工具摩耗で表面粗さが悪化することがあるため、最終仕上げの条件設定が必要です

よくある誤解

  • SUS304は柔らかく加工が簡単:実際には加工硬化により加工難易度は中〜高
  • 切削速度を上げれば効率が上がる:高速度加工は加工硬化や発熱で工具寿命を縮める
  • 耐食性があるので表面処理不要:切削加工後の仕上げや防錆対策も必要な場合があります
  • 全ての工具材質で問題なく加工可能:加工硬化の影響で適切な工具選定が必須です

結論として、SUS304の切削加工では加工条件、工具材質、冷却・潤滑管理を整理したうえで加工計画を立てることが、精度と工具寿命の両立につながります。

よくある質問

SUS304は切削加工が簡単と聞きますが、本当ですか?
SUS304は耐食性と靭性に優れていますが、切削加工では加工硬化が起こりやすく、工具摩耗も発生します。加工条件や工具材質の管理が不可欠で、加工難易度は中~高程度です。
加工硬化とは何ですか?
加工硬化とは、切削や曲げなどの加工によって材料表面が局所的に硬くなる現象です。SUS304では加工硬化により工具に負荷がかかり、加工割れや工具摩耗の原因になるため注意が必要です。
SUS304の切削加工で工具摩耗を抑える方法はありますか?
切削速度・送り・切込み深さを適切に設定し、超硬やコバルト合金、チタンコーティングなどの適切な工具を使用します。また冷却液や潤滑を活用することで加工熱を抑え、工具摩耗や加工硬化を最小限にできます。
切削後の表面品質が悪くなることはありますか?
はい。加工硬化や工具摩耗により表面粗さが悪化することがあります。仕上げ精度が求められる場合は、低速度・低送りで粗削り後に仕上げ加工を行うことで表面品質を確保できます。