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ハステロイとSUSの違いがすぐ分かる|材料選定で迷わない判断基準と注意点

結論:ハステロイとSUS(ステンレス鋼)の違いは、耐食性の設計思想・想定用途・材料コストにあります。SUSは幅広い用途に対応できる汎用材料であり、ハステロイはSUSでは性能不足となる環境を想定した高耐食合金です。どちらが優れているかではなく、用途に対して適切かで判断します。

意味・定義

SUSとは、日本工業規格(JIS)で規定されたステンレス鋼の記号で、鉄を主成分とし、クロムやニッケルを添加することで耐食性を持たせた材料群です。SUS304やSUS316などが代表例として知られています。

一方、ハステロイはニッケルを主成分とする耐食合金で、特定メーカーによって開発・管理されている合金ブランド名です。モリブデンやクロムを多量に含み、一般的なステンレス鋼では対応できない腐食環境を想定しています。

比較項目 SUS(ステンレス鋼) ハステロイ
材料系統 鉄基合金 ニッケル基合金
耐食性 一般環境向け 非常に高い
材料コスト 比較的安価 高価
流通性 高い 限定的

SUSの種類や成分差については、ここで使っているステンレス鋼の分類について解説しています。

基準・考え方

ハステロイとSUSの選定は、「SUSで成立する条件かどうか」を起点に考えるのが基本です。以下の順序で整理すると判断しやすくなります。

  1. 使用環境(温度・雰囲気・接触物質)を整理する
  2. SUS304・SUS316などの実績材で問題がないか確認する
  3. 耐久性や安全余裕が不足する場合にハステロイを検討する

多くのケースではSUSで十分な性能が確保でき、最初からハステロイを選ぶ必要はありません。SUSでの実績有無や代替可能性を確認することが、コストと納期の最適化につながります。

注意点

ハステロイは高い耐食性能を持つ一方で、扱いづらさも併せ持つ材料です。以下の点は事前に理解しておく必要があります。

  • 材料価格が高く、調達リードタイムが長くなりやすい
  • 切削抵抗が大きく、工具摩耗が早い
  • 加工対応できる設備・ノウハウが限られる

また、ハステロイを選定しても、設計や加工条件が不適切であれば性能を活かしきれません。

よくある誤解

ハステロイとSUSの比較では、次のような誤解が起きがちです。

  • ハステロイはSUSの完全な上位材ではない
  • SUSはどんな環境でも錆びない材料ではない
  • 高価な材料ほど安心とは限らない

材料は「性能が高いか」ではなく、「条件に合っているか」で選ぶものです。SUSで成立する条件下では、ハステロイを使うことが必ずしも最適解とはなりません。

まずはSUSで対応可能かを整理し、必要な場合にのみハステロイを検討する。この考え方が、材料選定での失敗を防ぐ基本となります。

よくある質問

ハステロイとSUSは、どちらを選べばよいか迷った場合はどう考えればいいですか?
基本的には、まずSUSで条件を満たせるかを確認するのが判断の起点になります。SUS304やSUS316などで実績があり、耐久性や安全余裕に問題がなければ、無理にハステロイを選ぶ必要はありません。SUSでは性能不足になる環境や条件の場合に、ハステロイを検討する流れが一般的です。
ハステロイはSUSよりも必ず性能が高い材料と考えてよいのでしょうか?
ハステロイは耐食性に優れた材料ですが、SUSの完全な上位材というわけではありません。材料は性能の高さだけでなく、使用条件との適合が重要です。SUSで成立する条件下では、ハステロイを使用しても過剰品質になることがあり、コストや加工性の面で不利になる場合もあります。
ハステロイを使えば加工や設計上のトラブルは起きにくくなりますか?
ハステロイは高い耐食性能を持ちますが、加工や設計が簡単になるわけではありません。切削抵抗が大きく工具摩耗が早いなど、扱いづらさもあります。設計条件や加工方法が適切でなければ、材料本来の性能を十分に活かせないため、事前の検討が重要です。