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SUS420J2の特性を徹底解説!硬度・成分・比重の基本情報

SUS420J2という素材に興味はありますか? SUS420J2は、さまざまな産業で広く使用されており、その特性や基本情報について知識を持つことは重要です。この記事では、SUS420J2の特性を徹底的に解説します。硬度、成分、比重などの基本情報を詳しく説明し、この素材の特性や用途について理解を深めることができます。SUS420J2に関心を持っている方やこの素材の特性について詳しく知りたい方にとって、この記事は参考になることでしょう。

SUS420J2とは

SUS420J2は、マルテンサイト系ステンレス鋼の一種で、耐摩耗性や耐食性が求められる用途に使用される素材です。高い硬度と強度を誇り、刃物や機械部品など、精密で耐久性が重要な製品に多く使用されています。以下にSUS420J2の特徴とその分類について詳述します。

SUS420J2の定義と分類

SUS420J2は、鉄にクロム(Cr)を含んだマルテンサイト系ステンレス鋼であり、特に高い硬度を持つことが特徴です。この鋼材は、クエンチング(急冷)とテンパリング(再加熱)処理を行うことにより、優れた耐摩耗性と耐久性を得ることができます。

分類

  • マルテンサイト系ステンレス鋼:この鋼の特徴は、硬度が高く、耐摩耗性が強いことです。また、硬化処理により、高い強度を発揮しますが、他のステンレス鋼に比べて耐食性はやや劣ります。
  • クロム含有:SUS420J2は約12%のクロムを含み、これにより耐食性と耐酸化性が向上しています。

マルテンサイト系ステンレス鋼の基礎知識

マルテンサイト系ステンレス鋼は、鉄を基にクロムを加えて作られ、主に硬度、強度、耐摩耗性に優れる材料です。具体的な特徴は以下の通りです。
  • 硬度と強度:マルテンサイト系ステンレス鋼は熱処理によって高い硬度と強度を得ることができるため、刃物や精密機器の部品に最適です。
  • 耐食性:クロムを含むことで、多少の耐食性を持ちますが、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304など)に比べて耐食性が低いです。特に塩分や酸性環境には弱い面があります。
  • 加工性:硬度が高いため、加工は難しいですが、切削性に優れており、適切な工具を使用すれば精密な加工が可能です。
SUS420J2は、耐摩耗性や高硬度が必要な機械部品、刃物、弁部品などに広く使用されています。その特徴を理解し、使用環境に応じて選択することが重要です。

SUS420J2の成分と特性

SUS420J2は、特に硬度が高く、耐摩耗性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼です。この鋼材の成分と特性について詳述します。

主な化学成分と役割

SUS420J2の化学成分は、主に以下の通りです。

  • 炭素 (C):0.26~0.35% 炭素は鋼の硬度を向上させる要素であり、SUS420J2の硬化能力に貢献します。適切な炭素含有量は、鋼の強度と耐摩耗性を高めます。
  • クロム (Cr):12.0~14.0% クロムは、ステンレス鋼に特有の耐食性を付与する成分です。12~14%のクロム含有により、SUS420J2は一定の耐食性を持ち、酸化や腐食から鋼を保護します。
  • マンガン (Mn):最大1.00% マンガンは、鋼の強度や硬度を向上させるために加えられる成分で、耐摩耗性にも寄与します。また、鋼の鋳造性や加工性にも影響を与えます。
  • シリコン (Si):最大1.00% シリコンは、鋼の酸化を防ぎ、耐熱性を向上させます。特に高温環境下での使用において重要です。
  • ニッケル (Ni):最大0.75% ニッケルは鋼に延性や耐腐食性を与える成分ですが、SUS420J2は比較的低いニッケル含有量であるため、他のオーステナイト系ステンレス鋼よりも耐食性がやや劣ります。

これらの成分が組み合わさることにより、SUS420J2は高硬度、耐摩耗性、一定の耐食性を備えた鋼材となります。

硬度とその影響因子

SUS420J2の特徴的な性質は、その高い硬度です。主な因子としては以下が挙げられます。

  • 炭素量:炭素含有量が高いほど、鋼は硬度が増します。特に、熱処理においてクエンチング(急冷)を行うことで、鋼はマルテンサイト構造を形成し、高い硬度を得ます。
  • 熱処理:SUS420J2は、焼入れや焼戻し(テンパリング)などの熱処理により、硬度を調整することができます。これにより、耐摩耗性が向上し、刃物などの用途に適した高い強度を持つようになります。
  • 冷却速度:クエンチング時の冷却速度が速ければ、より高い硬度が得られますが、過度に急冷しすぎると割れやひずみが生じるリスクがあります。

比重と物理的性質

SUS420J2の比重はおおよそ7.75~8.05です。比重は鉄の標準的な比重に近く、金属として一般的な範囲に収まります。以下の物理的性質も重要です。

  • 引張強度:SUS420J2は硬度が高い分、引張強度も高いですが、延性は低く、急激な衝撃には弱い可能性があります。
  • ヤング率(弾性率):おおよそ200 GPaで、これは鉄や他のステンレス鋼とほぼ同等の値です。

プリハードン鋼としての特性

SUS420J2は「プリハードン鋼」としても知られており、これは熱処理を行う前にある程度の硬度を持っていることを意味します。この特性は、さらなる硬化処理(焼入れや焼戻し)を行わなくても、比較的高い硬度を持つことを示しています。そのため、次のような用途に適しています。

  • 刃物や工具の製造:高い硬度と耐摩耗性が求められる刃物や金型などの部品。
  • 機械部品:高い強度が必要とされるピンやシャフトなどの部品。
  • 耐摩耗性部品:摩擦や摩耗が多い部分に使用される部品。

このプリハードン鋼としての特性により、SUS420J2は加工の手間を削減し、比較的高い性能を発揮します。

SUS420J2の加工性

SUS420J2は高い硬度と耐摩耗性を持つマルテンサイト系ステンレス鋼で、加工には特別な注意と技術が求められます。以下の内容では、加工方法や技術、熱処理との関係、加工時の注意点についてリスト形式で整理しています。

加工方法と技術

  • 切削加工
    • 高硬度のため、通常の鋼材よりも切削が難しい。
  • 超硬工具コーティング工具を使用。
    • 低速回転、適切な切削速度、冷却剤の使用が必要。
  • 旋盤加工
    • 精密な切削が求められ、振動を抑えるための刃物選定と機械設定が重要。
  • フライス加工
    • 高硬度に対応するため、切削工具の摩耗が早い。
    • 切削速度や送り速度の適切な設定、冷却剤の使用が必要。
  • 研削加工
    • 精密な仕上げに有効。
    • 適切な砥石選定と冷却による精密仕上げ。

熱処理と硬度の関係

  • 焼入れ(クエンチング)
    • SUS420J2は焼入れによって、硬度が大幅に向上。
    • 焼入れ後の硬度は通常HRC 50~55
  • 焼戻し(テンパリング)
    • 焼入れ後、焼戻しを行い硬度と靭性のバランスを調整。
    • 焼戻し温度は150~200℃
  • 解決温度の管理
    • 高温での使用が求められる場合、焼戻しにより耐熱性を保つ。

加工時の注意点と対策

  • 工具の選定
    • SUS420J2は高硬度なので、超硬工具コーティング工具を使用して工具寿命を延ばす。
  • 切削速度と送り速度の設定
    • 高速切削は摩耗を引き起こすため、低速回転で加工を行い、過熱を防ぐ。
  • 冷却と潤滑
    • 切削時に冷却剤や潤滑剤を使用し、切削熱の発生を抑える。油性冷却剤水溶性冷却剤が効果的。
  • 温度管理
    • 加工中に過熱しないよう、冷却を十分に行う。高温による軟化を防ぐ。
  • 工具交換のタイミング
    • 摩耗した工具を使用すると不良品が発生するため、定期的に工具を交換または再研磨する。

SUS420J2の応用分野

SUS420J2はその優れた硬度と耐摩耗性から、特定の条件下での使用に適しています。以下では、SUS420J2の一般的な使用例と、他のステンレス鋼との比較を示します。

SUS420J2の一般的な使用例

  • 刃物類
    • 高硬度と耐摩耗性が求められるため、包丁ナイフ剪定鋏などの刃物の製造に使用される。
  • 工具類
    • ドリルビットカッターなど、加工中に摩耗しやすい工具の製造に用いられる。
    • ベアリング
    • 高い耐摩耗性が求められるため、ボールベアリングローラーベアリングの部品としても利用される。
  • 機械部品
    • シャフトギアカムなど、機械の動作部品にも適用される。
  • 医療機器
    • 外科用手術器具歯科用具インプラント部品など、耐食性と強度が求められる分野で使用されることがある。
  • 自動車部品
    • 自動車のエンジン部品トランスミッション部品など、耐摩耗性が重要な部分で利用される。

他のステンレス鋼との比較

  • SUS304との比較
    • SUS304はオーステナイト系ステンレス鋼で、耐食性に優れますが、硬度はSUS420J2ほど高くありません。SUS420J2は硬度が高いため、機械部品工具類の用途に適していますが、耐食性はSUS304には劣ります。
  • SUS316との比較
    • SUS316は耐食性が非常に高いマルテンサイト系ステンレス鋼であり、特に海水などの腐食性の強い環境で優れた耐性を発揮します。一方で、SUS420J2は耐摩耗性が高いものの、耐食性はSUS316には劣ります。SUS420J2は摩耗が多い部品工具類に優れていますが、腐食環境には不向きです。
  • SUS440Cとの比較
    • SUS440CはSUS420J2よりもさらに高い硬度を持ち、耐摩耗性に優れた特性を持っていますが、加工が難しくなることが多いです。SUS420J2は適度な硬度を持ちつつ、加工性が良いため、精密加工が必要な部品に使用されることが多いです。

SUS420J2のメリットとデメリット

SUS420J2はその特性からさまざまな用途で利用されていますが、メリットとデメリットがあります。以下に、強度、耐久性、耐食性、メンテナンスの観点からその特徴を詳しく見ていきます。

強度と耐久性の優位性

メリット:

  • 高い硬度
    • SUS420J2は非常に高い硬度(最大HRC52程度)を持ち、これにより摩耗に強く、特に刃物や工具類に適しています。
  • 耐摩耗性
    • 硬度の高さにより、使用中に摩耗しにくい特性を持っています。ベアリング機械部品などの高い耐摩耗性が求められる部品に最適です。
  • 優れた強度
    • 硬度が高いだけでなく、引張強さや耐圧強さも十分に高いため、重負荷がかかる部品に向いています。

デメリット:

  • 脆性
    • 高硬度を持つ反面、脆性(特に低温での割れやすさ)が高くなるため、衝撃や急激な負荷には弱い傾向があります。これにより、衝撃に弱い使用環境では不適切です。

耐食性とメンテナンスの必要性

メリット:

  • 優れた耐摩耗性
    • SUS420J2は摩耗には強いものの、耐食性については他のオーステナイト系ステンレス鋼に比べると劣るものの、日常的な環境下での使用には十分な耐食性を発揮します。

デメリット:

  • 耐食性がやや劣る
    • SUS420J2はマルテンサイト系ステンレス鋼のため、耐食性はSUS304やSUS316に比べて劣ります。特に海水化学薬品が関わる環境では、早期に腐食する可能性があります。
  • メンテナンスの必要性
    • 耐食性がやや低いため、定期的なメンテナンスが必要です。例えば、防錆処理表面コーティングを施して、使用環境に応じた耐食性を向上させることが求められます。
  • 表面処理の必要性
    • 硬度を生かすためには表面処理が必要であり、熱処理やコーティングを行うことで、さらなる耐食性向上が期待できます。

ステンレス鋼材の選択ガイド

21種類のステンレス鋼材とSUS420J2の比較

鋼材名 特性 硬度 耐摩耗性 耐食性 使用例
SUS420J2 マルテンサイト系 HRC52 高い 普通 ナイフ、刃物
SUS304 オーステナイト系 HRC30 中程度 高い 食品加工、キッチン用品
SUS316 オーステナイト系 HRC30 中程度 非常に高い 海洋機器、化学装置
SUS440C マルテンサイト系 HRC58-60 非常に高い 普通 高級ナイフ、切削工具
SUS630 プレピンテック系 HRC40-44 高い 高い 航空機、機械部品
SUS301 オーステナイト系 HRC35-45 中程度 普通 機械部品、スプリング
SUS303 オーステナイト系 HRC30 中程度 高い 金属部品、精密機器
SUS420 マルテンサイト系 HRC50-55 高い 普通 刃物、ナイフ
SUS431 マルテンサイト系 HRC50-56 高い 中程度 自動車部品、シャフト
SUS630 プレピンテック系 HRC40-44 高い 高い 航空機、機械部品
SUS321 オーステナイト系 HRC30-35 中程度 高い 熱交換器、化学機器
SUS201 オーステナイト系 HRC30-35 普通 中程度 家電、家庭用品
SUS409 フェライト系 HRC25-35 中程度 高い 排気系部品、車両部品
SUS430 フェライト系 HRC30-35 中程度 中程度 キッチン用品、装飾品
SUS416 マルテンサイト系 HRC45-55 高い 普通 ナイフ、医療機器
SUS420F マルテンサイト系 HRC50-55 高い 普通 精密機器、刃物
SUS303Cu オーステナイト系 HRC30-35 高い 高い 電気機器、機械部品
SUS304L オーステナイト系 HRC25-30 中程度 非常に高い 食品機器、化学装置
SUS317L オーステナイト系 HRC30-35 高い 非常に高い 食品業界、海水環境
SUS202 オーステナイト系 HRC30-40 中程度 高い 自動車部品、家庭用品
SUS304Cu オーステナイト系 HRC30-35 高い 高い 電気機器、電子機器

SUS420J2と他のステンレス鋼材の比較:

  • 耐食性:SUS420J2はオーステナイト系ステンレス鋼(例:SUS304, SUS316)に比べて耐食性は劣ります。特に腐食性の強い環境では、SUS304やSUS316が推奨されます。
  • 硬度:SUS420J2は比較的高い硬度(HRC52)を持ち、切れ味の持続性が高いです。SUS440CやSUS420Fなどと比較すると、さらに硬く、刃物に適しています。
  • 使用例:SUS420J2は主に刃物、ナイフなどの鋭利な工具に使用されますが、SUS304やSUS316は食品業界や家庭用品など、耐食性を重視した用途に適しています。

まとめ

SUS420J2は、高いクロム含有量により優れた耐蝕性を持つステンレス鋼です。また、炭素含有量が高いため硬度があり、熱処理によってその硬度を調整することが可能です。この特性から、刃物や工具などの用途に広く使用されています。 SUS420J2は、成分としてはクロムと炭素が主成分であり、それ以外の成分はごくわずかです。クロムの含有量が耐蝕性に大きな影響を与え、炭素は硬度を高める役割を果たしています。さらに、その比重は一般的なステンレス鋼と同様の範囲にあります。 これらの特性から、SUS420J2は刃物や工具などの用途に適しており、その硬度や耐蝕性は多くの産業分野で重宝されています。